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今月の一冊

今月の一冊子どもの頃から本が好きで、暇さえあれば読んできました。
毎月一冊、これまでの読書の中で印象に残った本をご紹介させていただきます。


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2022年の本一覧
『 日本の弓術 』 オイゲン・へリンゲル・述 柴田治三郎・訳

日本の弓術

的にあてることを考えるな、ただ弓を引き矢が離れるのを待って射あてるのだ、という阿波師範の言葉に当惑しながら著者(1884‐1955)は5年間研鑽を積み、その体験をふまえてドイツに帰国後講演を行なった。ここには西欧の徹底した合理的・論理的な精神がいかに日本の非合理的・直観的な思考に接近し遂に弓術を会得するに至ったかが冷静に分析されている。…と内容紹介されています。

ドイツ人の哲学者であるヘリンゲル氏が、東北大学で教鞭を取っていた時期に日本文化に接するため、弓術を習ったそうです。その氏が、帰国後、ドイツで講演した記録がもとになっています。精神の鍛錬としての弓術が読み進むにつれ伝わってきました。

121頁の薄い文庫本ですが、非常に内容の深い、厚みのある本だと思いました。弓術だけでなく、禅や日本文化の奥行きを感じることができるおすすめの名著です。

1982年10月 岩波文庫 572円 (kindle版も同額)

『 子どもが心配 人として大事な三つの力 』 養老 孟司 著

子どもが心配 人として大事な三つの力

子どもたちの遊び場が次々に消失し、体を使って外で遊ぶ子どもの姿を見なくなった。自殺する子どもも、後を絶たない。子どもは本来「自然」に近い存在だと論じる解剖学者が、都市化が進んだ現代の子どもを心配に思い、四人の識者と真摯に語り合う。

医療少年院で非行少年の認知能力の低さに愕然とし、子どもの認知能力の向上に努めてきた宮口幸治氏。インターネットで「正しい育児法」を追いかける親を心配する、慶應義塾大学病院の小児科医、高橋孝雄氏。国産初の超電導MRIを開発し、子どもの脳の大規模研究を行なってきた小泉英明氏。生徒が自分で野菜を育て、机や椅子も作る学校、自由学園の高橋和也氏。子どもと本気で向き合ってきた経験から紡ぎ出される教育論…と内容紹介されています。

それぞれの専門家と養老先生の対談がまとめられています。サブタイトルの三つの力とは、学びのための根本的な能力「認知機能」と、「共感する力」、そして「自分の頭で考える人になる」ことを示すそうです。読み進むにつれ、もっと早くに読みたかったという気持ちになりました。第4章の終りの方に書かれていた著者の「子育てとか教育というのは、手間暇かかるものなんです」という言葉が印象に残りました。

人間そのものを考える上でも、参考になるところが随所にあります。子育て中の方だけでなく、すべての大人の方々におすすめしたい一冊です。

2022年3月 PHP新書 900円(税別)

『 世界は不思議に満ちている-「共感」から考えるヒトの進化 』 長谷川 眞理子 著

『世界は不思議に満ちている-「共感」から考えるヒトの進化』

なぜ利他行動が進化したのか。連綿とつづく進化史において、ヒトは近年、異常な状態に置かれている。70億人を超える世界人口、化石燃料を中心とした大量のエネルギー消費、IT技術の急速な進歩--。足りすぎているのに不足感を募らせよと迫りくる文明の行き着く果てとは? ヒトが長い時間をかけて進化させてきた「共感」をもう一度想い出し、次世代へとつなげるために、いま、立ち止まって考える…と内容紹介されています。

人類学者の長谷川先生が雑誌や機関誌に発表されてきたエッセイや論考を3部構成(「世界へ出る」「ヒトを知る」「社会で生きる」)で、まとめた本です。弱い存在だったヒトが共感する能力を得て、それを磨き、互いに助け合い、今日のような文明を築くに至った理由が説明されています。

「ヒトはマングースなどに近い“共同繁殖”の動物だ。母親だけ、または母親と父親だけで子どもが育つことはなく、血縁者も非血縁者も含めた多くの個体がかかわって子育てをする哺乳類なのである」と指摘、虐待など子育ての諸問題を改善するためには「ヒトが共同繁殖の動物であるということを大前提として、社会福祉や教育を構築せねばならないだろう」と書かれているところが、特に印象に残りました。

生き物としてのヒトが進化してきた過程を知ることの大切さを教えてくれる、貴重な一冊です。

2018年9月 青土社  3,700円(kindle版 1,881円)

『「死」が教えてくれた幸せの本質 ―二千人を看取った医師から不安や後悔を抱えている人へのメッセージ 』 船戸 崇史 編

『「死」が教えてくれた幸せの本質 ―二千人を看取った医師から不安や後悔を抱えている人へのメッセージ』

二千人を看取り、自らもがんを経験した著者の船戸崇史医師。30年近くに渡る在宅緩和医療の経験から見えてきた「幸せの本質」を1冊の本にまとめました。死を目の前にして、人は何に幸せを感じるのか、後悔を残さない生き方とは何か、を実体験に基づいた深い視点から描いています。著者は「死を覚悟することは終わりではない。なぜなら、死を直面した方が人生は深まるから」と言います。しかし現在は日常から「死」が隠されている時代です。それゆえに現代人は本当の幸せを実感しづらい。お金をたくさん稼いでいても楽しそうではない人。家族や職場の人間関係にストレスを感じている人。将来に漠然とした不安を抱えながら過ごしている人。過去の後悔に囚われている人。現代人は様々な葛藤を抱えながら生きています。そんな私たちが亡くなった方々の生きざまを知ることにより、少しだけ自分の人生に勇気をもらえるかもしれません。不安や後悔、様々な葛藤を抱えている人にぜひ読んでいただきたい1冊です…と出版社からメッセージが出されています。

精一杯、生き切って逝かれる患者さんたち、そのご家族と船戸先生とクリニックのスタッフの姿を通して、生きること、死ぬこと、両方への勇気がもらえます。誰にでも、いずれ訪れる最期を意識することで、生きる意味がより鮮やかに炙り出されると船戸先生は書かれ、同時に「平素は楽しく、今を生きたいものです」とも述べておられました。

ずっと手元に置いて大事にしたい、おすすめの一冊です。

2022年2月 ユサブル  1,400円+税

『 ウェルビーイング 』 角川書店 編

ウェルビーイング

本書は話題のウェルビーイング(幸せ、健康、福祉)とは何か、基本的知識をわかりやすく解説します。研究者として、またビジネスの推進者として活躍する第1人者の2人が対話しながら書き上げました。ウェルビーイングの広がりで、社会やビジネス、人間の生き方がどう変わるのか、その影響の大きさと、研究の最前線、実現策が理解できます。私たちの人生、働き方、組織運営のあり方、そして社会を劇的に変えるウェルビーイングに関する知識は、これからを生きるすべての人にとって必要です…と内容紹介されています。

“おわりにーウェルビーイングの未来”に書かれていた「来た時よりも美しく」にあった「これから100年後、1000年後の子孫のために、この地球を、美しい地球として残そうではありませんか。私たち人類が、1000年後の子孫に恥じないような、俯瞰的な視野を持ち、みんなのことを考え、そのためにそれぞれが小さな一歩を踏み出す世代であろうではありませんか」という文章が強く印象に残りました。

世界が大きな岐路に立っている今、よりよい選択をし、小さくとも大事な一歩を踏み出すために必要なヒントを与えてくれる、おすすめの一冊だと思います。

2022年3月 日経文庫 990円

『 万葉集 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 』 角川書店 編

万葉集 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典

名歌140首を丁寧に解説。万葉集が不思議なほどよく分かる!楽しめる!新元号「令和」の出典「梅花の宴」序文は153ページに掲載― と内容紹介されています。

さまざまな人たちの歌を集めたわが国最古の歌集「万葉集」から名歌を選び、丁寧に解説されています。参考になる地図などの情報も載せられ、原文も現代語訳も総ルビ付きです。

肩ひじを張らずに楽しめる文庫本です。この本だけでなく、角川書店のビギナーズ・クラシックスのシリーズは、日本の古典を気軽に味わえますので、手元に何冊か置いて、時々読んでいます。学校の授業や宿題でおぼえた歌もありました。おすすめの一冊です。

2001年11月 角川ソフィア文庫 748円

『 センス・オブ・ワンダー 』 レイチェル・カールソン 著 上遠 恵子 訳

センス・オブ・ワンダー

雨のそぼ降る森、嵐の去ったあとの海辺、晴れた夜の岬。そこは鳥や虫や植物が歓喜の声をあげ、生命なきものさえ生を祝福し、子どもたちへの大切な贈り物を用意して待っている場所……。未知なる神秘に目をみはる感性を取り戻し、発見の喜びに浸ろう。環境保護に先鞭をつけた女性生物学者が遺した世界的ベストセラー。川内倫子さんの美しい写真と、半世紀たっても輝きを失わない理由を説く豪華執筆陣による解説とともに贈る ― と内容紹介されています。

『沈黙の春』の著者、海洋生物学者のレイチェル・カーソンさんの生前の最後の作品。 小さな甥を連れ、海辺や森を訪れる様子が語られています。自然の美しさ、生命の輝き、不思議さが静かに伝わってきます。短い作品で、あっという間に読み終えましたが、心地よい余韻が残りました。

昨年、文庫版も出版されました。何度でも読みたい、宝石のような素晴らしい一冊です。

2021年9月 新潮文庫 649円

『 由緒正しい日本の教養 』 齋藤 孝 著

由緒正しい日本の教養

「日本の教養」は日本人にとって人生を切り開くための最良のツールである。日本を代表する文化の本質を捉え、自分のものとすることで、日本人は誇り高く、力強く生きていける。俳句・茶の湯・禅・歌舞伎・能…凛とした日本人になるための「齋藤流」日本文化入門―
と内容紹介されています。

「俳句はユーモア感覚と二枚絵感覚で詠む」「茶道はもてなしを芸術化したもの」「歌舞伎は「型」のエンタメ芸」「身体感覚を広げる能」「日常に活用できる自己コントロール法としての禅」など、齋藤先生が独自の視点で、日本文化の本質を切り取り、その面白さ、楽しみ方までを語っておられる日本文化入門の書。イラストや写真も入って、分かりやすく解説されています。知っているつもりで、知らなかったことが、たくさんありました。

どなたにもお薦めの一冊です。残念ながら、絶版になっていますので、ご興味のある方は図書館や古書店をご利用ください。

2009年3月 メディアファクトリー 1,200円

『 教科書でおぼえた名詩 』 文藝春秋 編

教科書でおぼえた名詩

僕の前に道はない…春眠暁を覚えず…おごりの春のうつくしきかな…分け入っても分け入っても…あはれ花びらながれ…。高村光太郎、宮沢賢治、島崎藤村、土井晩翠、武者小路実篤、国木田独歩、萩原朔太郎、室生犀星、山村暮鳥、北原白秋、中原中也、草野心平、谷川俊太郎、高田敏子、石垣りん、茨木のり子ら詩人の代表作から、松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶ら俳人、正岡子規、石川啄木、そして俵万智ら歌人の作。杜甫らの漢詩、コクトーやヴェルレーヌら、海外の詩人の作。昭和二十年代から平成八年までの日本の中学、高校の国語教科書千五百余冊の中から、誰もが知っている二百五十篇の詩、漢詩、訳詩、短歌、和歌、俳句を精選したまさに国民的愛唱詩歌集。巻末にうろおぼえ索引、作者・題名索引を掲載…と内容紹介されています。

巻頭に、「すぐれた人の書いた文章は、それを黙読翫味するばかりでなく、ときには心ゆくばかり声をあげて読んでみたい。われわれはあまりに黙読になれすぎた。文章を音読することは、愛なくてはかなわぬことだ」という島崎藤村の言葉が掲げられています。

学校で習った頃を思い出しながら、時々音読して、気分転換をしてきました。 詩も俳句も短歌、和歌も漢詩も好きなものがたくさん載っています。李白の「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」が特に好きです。(^^;

若い方にも、年配の方にも、おすすめの一冊です。

2005年5月 文春文庫PLUS 594円

『 ことばの歳時記 』 金田 一春彦 著

ことばの歳時記

四季折々のことばの背後にひろがる日本人の生活と感情、歴史と民俗。
一日一語を取り上げ、一ページで綴る異色歳時記。50年にわたり読み継がれてきた、不朽のロングセラー。

移りかわる日本の美しい四季折々にふれ、ある日は遠く万葉の時代を回顧し、ある日は楚々とした野辺の草木に想いをはせ、ある日は私達が日常生活の中で何げなく使っている言葉の真意と由来を平易明快に説明する――。
一月一日から十二月三十一日まで、ユニークな発想と深い学識によって捉えられ選ばれた日本語の一語一語が、みずみずしく躍動し、広い視野と豊かな教養をはぐくむ異色歳時記…と内容が紹介されています。

金田一先生の深く豊かな教養とあたたかなお人柄がにじみ出た本。「そうだったのか」と言葉についての長年の謎が解けたり、「へぇ」と驚いたり、しみじみ「素敵だな」と感じながら楽しんで読みました。手元に置いて、時々読み返しています。

言葉を通して、日本の文化の源流にも触れることができる、どなたにもお薦めしたい一冊です。

1973年9月 新潮文庫 737円

『 ハッとする!折り紙入門 』 布施 知子 著

ハッとする!折り紙入門

たかが紙一枚から動物や花が立ち現われた時、ハッと脳が活性化される。折り紙は久しぶりの方も折り紙ファンもぜひ。子どもも高齢の方も楽しめる。誰でも知っている折鶴や風船からの応用や、表情豊かな動物たち、日常に使えるのし袋や箱など。エッセイやコラムで、折り紙のコツ、魅力を伝える。この本さえあれば海外でどこでもあなたは人気者に!(推薦文:松尾貴史氏)― と裏表紙に書かれていました。

パーツを組み合わせて作る「ユニット折り紙」の第一人者として活躍する折り紙作家の布施知子さんの文庫本。伝統的な折り紙を分かりやすく説明しているだけでなく、かわいい動物や花の折り紙、使えそうな熨斗つづみなど、たくさん紹介されています。

おなじみの鶴の折り紙を応用したリースや箸袋が素敵でしたので、購入しました。器用とは言い難い私でも、それなりに出来ました。楽しい、どなたにもおすすめの一冊です。

2013年11月 筑摩書房 924円

『 〈神道〉のこころ 』 葉室 頼昭 著

〈神道〉のこころ

日本人の本当の生き方とは。西洋医が東洋の医学を学び、やがて宮司への道を歩むまでの波瀾万丈の半生と、〈本当のこと〉に目覚め生きることの大切さを語ったインタビュー・エッセイ…と内容紹介されています。

はしがきには「学生時代、当時、不治の病いともいわれた肺結核が突如『消え失せる』という神秘的な体験をした私は、その後、医療の世界に携わりながら、この不思議で驚くべき私の体験がどうして起こったのか、その答えを探究し続けてきましたが、またそれは同時に、本当のこと、人間としてどのように生きていくことが真実の幸せなのかを求める日々でもありました。

医者として四十年を過ごし、そして春日大社の宮司となって、二十年に一度の大儀式、式年造替を奉仕したことから、これまでの人生で私がずっと思い悩み、考え続けてきたことの本質がようやくまとまり、見えてきたのです」と、著者が述べておられます。

ご自身の体験に基づく「いのち」について、神道のこころについて、わかりやすく、静かに語られています。1997年出版された、初版を手にした時、とても感動しました。以来、たいせつな本として、手放せない一冊になりました。

2013年 9月 春秋社 1,760円