子どもの頃から本が好きで、暇さえあれば読んできました。
毎月一冊、これまでの読書の中で印象に残った本をご紹介させていただきます。
- 2011年12月『 安心して絶望できる人生 』 向谷地生良・浦河ベてるの家 著
- 2011年11月『 百歳 』 柴田 トヨ 著
- 2011年10月『 幕末下級武士の絵日記―その暮らしと住まいの風景を読む 』 大岡 敏昭 著
- 2011年 9月『 日本の歴史7 明治維新 』 田中 彰 著
- 2011年 8月『 歴史のなかの江戸時代 』 速水 融 編
- 2011年 7月『 謎解き 広重「江戸百」 』 原信田 実 著
- 2011年 6月『 おはようパーソナリティ 道上洋三の「ないしょ話」 』 道上 洋三 著
- 2011年 5月『 人生には 何ひとつ 無駄なものはない 』 遠藤 周作/鈴木 秀子 監修
- 2011年 4月『 くじけないで 』 柴田 トヨ 著
- 2011年 3月『 待ってたよ。 』 三遊亭 あほまろ 著
- 2011年 2月『 本物のエコとは「人を愛するきもち」 』 田中 忠三郎 著
- 2011年 1月『 それでもあなたの道を行け 』 ジョセフ・ブルチャック 編 中沢新一+石川雄午 訳
『 安心して絶望できる人生 』 向谷地生良・浦河ベてるの家 著
精神病を抱えた人たちが、自分で自分の助け方を見つける浦河ベてるの家。
今日も順調に問題だらけだ!病気なのに心が健康になってきた。…と帯に書かれています。
先月、名古屋のイベントでお会いした向谷地先生とベてるの家の皆さまの飾り気のない 温かさの触れ、もっと知りたくなって読んでみました。
自分の弱さを隠し、人の顔色を伺いながら自分の感情を押し込めて生きると、自分自身を酷く傷めつけてしまうことを気づかせてくれます。
べてるの家の絆の中で、醜さも脆さも受け止めてもらえる安心感からメンバーのお一人おひとりが自分自身を受け止め、絶望の裏返しの希望を見出されていく姿に打たれます。
苦労も絶望も虚しさも、人生の宝になることを教えてくれる貴重な一冊です。
NHK出版 生活人新書 2006年11月 777円
『 百歳 』 柴田 トヨ 著
98歳で初めての詩集『くじけないで』(2011年3月の今月の一冊)を出版された柴田トヨさんの2冊目の本。被災地で、たくさんの方々が読んでいらっしゃるそうです。
「浮き沈みは激しくても、これまでどうにか無事に過ごすことができたのは、何でも一生懸命にやる質だったからかもしれません。人生、やっぱり誠実にいきるのがいちばんですからね。
そうやって、この手で働いて百年。無我夢中で生きてきました。」と語る著者の言葉の温かさが、心をやさしく包んでくれるような気がしました。
読み終わった時、「私も頑張ろう」と素直に思える一冊です。
飛鳥新社 2011年9月 1,000円
『 幕末下級武士の絵日記―その暮らしと住まいの風景を読む 』 大岡 敏昭 著
幕末、忍藩(現在の埼玉県行田市)の城下町に暮らした尾崎石城という人が記した絵日記をもとに著された本。 自分の思うところを述べて降格され、妹の嫁ぎ先に身を寄せて暮らす30代の独身の武士の日常が、軽妙な筆づかいの絵と共に綴られていました。
内職をしていても髪結い代に困るような経済状態ながら、 尾崎石城さんが家族や友人、近所の人たちと分け隔てなく、温かく交わり、楽しげな行き来をして暮らしていた様子が伝わります。 友人が病に罹れば看病し、親身になってお金の工面までする尾崎氏の情の篤さや不平不満を言わず、静かに書を読み学び続けていた姿勢にも心惹かれました。
お寺の和尚さん、友人の武士、妹家族、料亭の女将さん、近所の人々に犬や猫まで描かれている酒宴の絵からは、笑い声が聞こえ、湯気が立ち上ってきそうです。 「おじゃまします」と仲間に入れていただきたくなりました。(^^)
建築史学を研究されている著者の建築に関する文章も、勉強になります。
物質的には貧しかったかもしれませんが、人情の面では豊かだった時代を知ることができるお薦めの一冊です。
相模書房 2007年5月 1,470円
2011年 9月『 日本の歴史7 明治維新 』 田中 彰 著
ペリーの浦賀来航、開国、倒幕、西南戦争、自由民権を経て、近代的立憲国家の樹立へとなだれを打って動いた激動の幕末・維新-この風雲急を告げる時代の立役者となった薩長はじめ幕末の志士たちの胸の内には,いったいいかなる「新しい日本国」の青写真があったのか? その謎に迫りつつ、この大変革の歴史的意味を考える、…と裏表紙に書いてありました。
小説やドラマでよく取り上げられる「維新」の全体像を学ぶことができます。 岩波ジュニア新書の日本の歴史シリーズの中の第7巻目。 田中彰先生が、維新の底流に何があり、それがその後の日本にどのような影響を及ぼしたかをわかりやすく浮き彫りにされておられます。 ジュニア新書、200ページと少しの本ですが、読みごたえのある一冊です。
岩波書店 岩波ジュニア新書 2000年4月 777円
2011年 8月『 歴史のなかの江戸時代 』 速水 融 編
「江戸時代=封建時代という従来の江戸時代像」を全体的塗り替えた30年前の画期的座談集に、新たに磯田道史らとの座談を大幅に増補した決定版。
「本書は、江戸時代を見つめ直すことにより、日本の経験や、日本社会が持っていたものは何だったのかを今一度問うてみようとする試みである。」(著者)と帯に書かれた本です。
いろいろな分野の角度から見た江戸時代像が浮き彫りにされていて、勉強になりました。
新たに磯田先生の座談が加わっていますが、最新の研究を反映した第2弾の座談集も読んでみたいと思いました。
藤原書店 2011年3月 3,780円
『 謎解き 広重「江戸百」 』 原信田 実 著
歌川広重の「江戸名所百景(江戸百)」の謎を解く本。
江戸名所百景が単なる名所の紹介だけではなく、ある意図を巧妙に隠し入れて連作されていると著者は語ります。
安政の大地震から復興する江戸庶民の喜怒哀楽、そして安政の大獄や明治維新へとつながっていく江戸末期の社会の姿も伝わってきました。
新書版の大きさですが、二代目広重作も含めて全120景がカラ―で印刷されています。眺めても楽しめる一冊です。
集英社新書ヴィジュアル版 2007年4月 1,155円
『 おはようパーソナリティ 道上洋三の「ないしょ話」』 道上 洋三 著
1枚の葉書きから広がる、温かくて優しい24編の人間ドラマ。
「ひたむきに生きるリスナーの姿が、34年間、僕を支えてくれました」
道上氏は、大阪の朝日放送で34年間、月曜から金曜日までの朝の時間帯に
パーソナリティを続けておられます。
番組に寄せられた葉書や、ゲストのエピソードなどをもとにして24編が
わかりやすい語り口で綴られています。
読みやすい本なのですが、一気に読むのがもったいなくて
少しずつ、味わって読ませていただきました。
本に登場するリスナーのお話の一つ一つが、日々の暮らしの尊さを伝えて
当たり前だと思っていることのありがたさを改めて気づかせてくれました。
毎朝、大勢のリスナーに向かい続ける道上氏の真摯な姿も浮かび上がり
そこから「生き方」や「仕事に対する在り方」も学ばせていただくことが出来ました。
道上氏のさりげない優しさが行間にあふれ、読み終わった時、元気になっていました。(^^)
「ないしょ」にしておくのはもったいない、みんなにお薦めしたくなる一冊です。
朝日新聞出版 2011年4月 1,050円
『 人生には 何ひとつ 無駄なものはない 』 遠藤 周作/鈴木 秀子 監修
真摯に、時にはユーモアを交えて多数の作品を発表した遠藤周作。
今もなお多くの人に愛される名作の中から、人生・愛情・宗教・病気・生命・仕事などについて書かれた文章を選び、抜粋した珠玉のアンソロジー。温かくて優しい、けれども鋭い人生観・人間観は、私たちの胸に深く強く響く…と紹介される本です。
亡くなった私の父も「人生には 何ひとつ 無駄なものはない」とよく言っていました。 「ふーん」と、よくわからず聞いていましたが、今になって何となくわかるような気がしてきました。
人間の弱さを静かに見つめ続けた遠藤周作氏の言葉のひとつ、ひとつに 智慧と読者への思いやりが満ちています。 読み終わった時、穏やかな気持ちになりました。
朝日新聞社 朝日文庫 2005年6月 630円
『 くじけないで 』 柴田 トヨ 著
99歳の柴田トヨさんが初めて出版された詩集。 100万部を超えた、ベストセラーです。
飾らない言葉で綴られた詩に元気をいただき、 同時に詩を通して伝わる、トヨさんのひたむきに生きる御姿に胸を打たれました。
巻末の… 「人生、いつだってこれから。だれにも朝はかならずやってくる」という言葉に 励まされる読者も多いと思います。
市井の人、トヨさんの詩が 生きる力をたくさんの人の心に届けています。 つらい時には、ありがたい一冊です。
飛鳥新社 2010年3月 1,000円
『 待ってたよ。 』 三遊亭 あほまろ 著
表紙を見て、思わず足を止めました。
野良猫ヒロちゃんと北海道犬のナナちゃんは大の仲よし。
毎朝散歩に連れられてくるナナちゃんを雨の日も風の日も待っているヒロちゃん…
犬と猫の何とも言えない、やさしい姿が写真にたくさん納められています。
ページを開き、眺めているだけで気持ちが温かくなります。
犬好き、猫好き、どちらの方にもお薦めの一冊です。
徳間書店 2010年9月 1,260円
『 本物のエコとは「人を愛するきもち 」』 田中 忠三郎 著
浅草にあるアミューズミュージアムで見つけました。
“物には心がある。消えゆく生活道具と作り手の思いに魅せられた人生”と表紙に書き添えられています。
古民具を通じて、昔の人々が物に込めてきた想いを次代に伝えたい。
青年時代の縄文土器発掘から始まった田中忠三郎の収集人生は、物に向かっていたようで実は、人であった。心であった。
そのすさまじいまでの、真っすぐな生きざまには、常に揺らぐことなく、
深い思いやりとやさしさが滲んでいる。…というページで始まる200ページの本。
収集されたボロと呼ばれる古い布などの話を通して、昔の青森の人たちが厳しい自然の中で懸命に生き、家族や仲間をせつないほど大切に想っていたことが伝わる一冊です。
分厚い本ではありませんが、中身はずっしり。
厳しさにハッとし、温かさにホッとし、おおらかさにクスッと笑いました。
悔いのない人生を生きようと常に心がけ、実際にそう生きてこられた著者の飾らない言葉は、やさしく、力強く、心に届きます。
何かに悩んだ時には、もう一度読んでみようと思いました。
アミューズ エデュテイメント 2009年10月 1,000円
『 それでもあなたの道を行け 』 ジョセフ・ブルチャック 編 中沢新一+石川雄午 訳
真っすぐにこちらをむいたナヴァホ族の青年の写真(1905年)が、表紙の本。
サブタイトルはインディアンが語るナチュラル・ウィズダム。
北アメリカ先住者の知恵にあふれた言葉が集められています。
白黒の美しい写真とともに、やさしく語られる一つ一つの言葉が胸に響く本です。
今の私たちが見失ってしまった、生きることの原点を厳しく、温かく伝えてくれているように思いました。
自然を敬い、人を大切にして生きた人たちからのメッセージ…静かに、ゆっくり読みたい本です。
めるくまーる 1998年8月 1,785円