辻川牧子のホームページ

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今月の一冊

今月の一冊子どもの頃から本が好きで、暇さえあれば読んできました。
毎月一冊、これまでの読書の中で印象に残った本をご紹介させていただきます。


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2017年の本一覧
『 孤独のすすめ 』 五木 寛之 著

孤独のすすめ

著者が2015年に『嫌老社会を超えて』を出版し、世代間闘争や暴走老人に警鐘を鳴らして約1年半…。100歳以上の高齢者が6万人を超え、団塊世代が70歳を迎える今、新たな「老い方」を考えることは日本にとって、私たち一人ひとりにとって最も重要な課題であるといえます。しかし、「高齢になっても元気に前向きに」は誰もができることではありません。老いに抗わず、等身大に受け止め、工夫して楽しむ。「嫌われる、迷惑をかける老人」にならないなど「賢老」という生き方のために日々実践できることを、84歳の著者自らの体験も交えながら綴った1冊。私たちが生きる日本。これから先、どんな未来が待っているのだろうか ― と内容紹介されている新書です。

老人の生き方のすすめだけでなく、今の社会への提言も含まれています。
各章に、ハッとする箇所がありましたが、特に「はじめに」の春愁と「おわりに」の回想についての文章が心に残りました。

自らの老いを感じた時に、お薦めしたい一冊です。

2017年7月 講談社 799円

『 縮小ニッポンの衝撃 』 NHK取材班 著

縮小ニッポンの衝撃

私たちが生きる日本。これから先、どんな未来が待っているのだろうか。
2016年に発表された国勢調査(平成27年度)によると、我が国の総人口は1億2709万人となった。5年前の調査と比べて、96万2667人の減少である。「人口減少」と言われて久しいが、実は、大正9年(1920年)の開始以来100年近い国勢調査の歴史上初めて日本の総人口が減少に転じた、ひとつの大きな節目であった。

今回、大阪府も初めて「増加」から「減少」に転じるなど、全国の実に8割以上の自治体で人口が減少した。しかも、減少の幅は拡大傾向にある。私たちがこれから経験するのは、誰も経験したことのない「人口減少の急降下」だ。

明治維新が起きた1868年、わずか3400万人あまりだった日本の人口は、医療・衛生状態の改善や食生活の向上、経済成長によって、昇り竜のような勢いで増え続けてきた。いま私たちが立っているのは、急上昇してきた登り坂の頂上をわずかに過ぎたあたり。ジェットコースターで言えば、スピードがゆっくりになり、これから先の凄まじい急降下を予感させる不気味な「静」の時間だ。この先には、目もくらむような断崖絶壁が待ち受けている。

2017年に発表された最新の予測では、人口減少のペースが若干弱まってはいるものの基調はほとんど変わっていない。国立社会保障・人口問題研究所は、出生率や死亡率の高低に応じて3パターンの予測値を発表している。真ん中の中位推計では、2053年には日本の人口は1億を切り、2065年には8808万人になるという。これから約50年間で実に3901万人の日本人が減少することになる。

しかも、人口減少と並行して、急速な高齢化が進む。日本は既に15歳未満の人口割合は世界で最も低く、65歳以上の割合は世界で最も高い水準にあるが、これから8年後の2025年には、日本は5人に1人が75歳以上の後期高齢者が占める超高齢社会に突入する。これらは国が想定する未来図であり極端な悲観論ではない。日本社会は、これから世界で誰も経験したことのないほどのすさまじい人口減少と高齢化を経験することになる…と内容紹介されている新書です。

少子高齢化、過疎化、人口減少などよく目にし、よく聞く言葉ですが、その実態については知らず、考えることなく過ごしてきましたが、この本を手にして、私たち一人一人が覚悟を決め、その準備をする時が来ていることを感じました。

どなたにも読んでいただきたいお薦めの一冊です。

2017年7月 講談社 799円

『 カラーリング・マンダラ 』 正木 晃 著

カラーリング・マンダラ

花をモチーフにした優美なものから、ネコやフクロウなどの可愛い動物もの、さらには目を幻惑するような不思議な図形まで、計32枚を収録。コンパクトサイズで手軽に塗れる…と内容紹介されています。

長年、曼荼羅を研究されておられる宗教学者の正木先生の本。
色鉛筆で手軽に楽しめる塗り絵です。本の帯には「楽しく自由に塗ってください」、「塗ることで癒される」と書かれていました。

あまり考えずにその時の気分でページを選び、好きな色を塗って私は楽しんでいます。童心に帰って夢中になるせいか、塗り終わると気持ちが晴れてほんわかとした感じに。眠る前のホットミルクのような、穏やかな気分になれるお薦めの一冊です。
(カラーリング・マンダラNEOなど、他にもシリーズで出版されています)

2006年2月 春秋社 1,296円

『 日本の食文化史 旧石器時代から現代まで 』  石毛 直道 著

日本の食文化史 旧石器時代から現代まで

刺身に代表されるように、日本料理では素材を生かし「できるだけ料理しない」を理想とする。独特の地形・気候・宗教観から、世界でも稀な食文化が形成されたのである。寿司・ソバ・テンプラ、味噌・醤油・だしはいかにして生み出され、普及したのか? 著者長年の研究の成果をもとに、日本食の変遷と魅力を辿る食文化通史…と内容紹介されています。

何がどのように食べられてきたか。文化人類学者の石毛先生が独自の視点から、旧石器時代から現代までの日本食の変遷をわかりやすく著した本。普段、何気なく摂っている食事が、どのように生まれ、どのようにして今日のようになったかを知ることができました。

「へぇー、そうだったの」と驚くことがたくさんある食の文化史。単なる知識だけではなく、「食」についての見方そのものが広がるお薦めの一冊です。

2015年11月 岩波書店 3,456円

『 トランクの中の日本 米従軍カメラマンの非公式記録 』 
写真 ジョー・オダネル/聞き書き ジェニファー・オルドリッチ/訳 平岡豊子

トランクの中の日本 米従軍カメラマンの非公式記録

戦争が日本各地に残した傷跡を私用カメラでも撮影したJ・オダネル。彼は密かに写真を持ち帰り、悲惨な光景の記憶とともに屋根裏部屋のトランクの中にしまい込んだ。43年後、トランクを開けさせたのは彼の平和への願いだった…と内容紹介される写真集。

オダネル氏は1945年9月、アメリカ占領軍のカメラマンとして広島・長崎その他、空爆による被災状況を記録する任務のため終戦直後の佐世保に上陸。その後、焦土と化した日本各地を撮影し、7か月後に帰国しました。あまりの惨さに心を痛め、「生きていくためにすべてを忘れてしまいたかった」氏は、個人用のカメラで撮影した写真を長い間トランクに封印。しかし、どうしても逃げられないと思うようになり、奇跡的に無事であったネガを現像して写真展を開くようになります。1990年からアメリカで、1992年から日本各地で開催されました。ワシントンのスミソニアン博物館での写真展は在郷軍人の圧力でキャンセルされましたが、この写真集にはその時、展示されなかった57点が収められています。

終戦直後の廃墟と、当時の人々の姿が映っています。
「老人」、「手伝いの子供たち」、「縄を持つ被爆者」、「着飾った少女」など、どれも印象に残る写真ばかりですが、死んでしまった幼い弟を、一人見送る少年を写した「焼き場にて、長崎」には、胸が詰まり、涙がこぼれました。

『焼き場に十歳くらいの少年がやってきた。小さな体はやせ細り、ぼろぼろの服を着てはだしだった。少年の背中には二歳にもならない幼い男の子がくくりつけられていた。その子はまるで眠っているようで見たところ体のどこにも火傷の跡は見当たらない。―略―
係員は背中の幼児を下し、足元の燃えさかる火の上に乗せた。― 少年は気をつけの姿勢で、
じっと前を見続けた。― 私はカメラのファインダーを通して、涙も出ないほどの悲しみに打ちひしがれた顔を見守った』(P96)

日本人だけでなく、世界中の人々に見てほしい写真集です。

1995年5月 小学館 2,700円 

『 実見江戸の暮らし 』 石川 英輔 著 

実見江戸の暮らし

歴史・時代小説ファン必携。エネルギー問題、食料事情、貧困だってなんのその。図版で一目瞭然! 住んでいるようにわかる江戸庶民の暮らしぶり。

相手の顔さえよく見えないほど暗かった行灯。「数メートルに一軒」というほどの隆盛を極めた外食店。・・・――。名所図会や絵草紙をはじめとした図版を豊富に収録。目で見て、読んで追体験する、表舞台の歴史資料には記されない、江戸庶民の実生活を徹底ガイド!…と内容紹介されています。

目次は、江戸を絵で見る、江戸の食さまざま、江戸の魚河岸・青物市場、江戸の酒、江戸の着物、明かり、江戸時代のお金、明六ツ、暮六ツの世界、旧暦の世界。各項目とも多くの資料から石川先生が観察された当時の暮らしぶりが、詳しくわかりやすく説明されています。小説の挿絵、地誌類の挿絵、絵本類から吟味された図版もたくさん掲載されていました。

江戸の庶民の生活がよく伝わる、面白いお薦めの一冊です。

2013年1月 講談社文庫 679円

『 子どもを信じること 』 田中 茂樹 著 

子どもを信じること

不登校、引きこもり、摂食障害、等々…。子育てをめぐる様々な悩みや苦しみはなぜ生じるのか。その仕組みを心理学の概念で解き明かし、多数の事例を紹介しながら子どもとのコミュニケーションの望ましいあり方について具体的な方法を提案する。脳科学者/医師/臨床心理士/四児の父親/少年サッカーの指導者である著者による書き下ろしと内容紹介されています。

図書館で子育てに関する本を探してる時に、この表紙の思いつめたような女の子の表情が気にかかり、借りて読みました。

ハッとするところが何か所もありましたが、特に「子どもを信じる」とは、「愛情を注ぐに値する子であるということを信じること」…という著者の言葉が強く心に残りました。

もっと早くに出会いたかったお薦めの一冊です。

2011年9月 大隅書店 3,024円

『 111歳、いつでも今から 』 後藤 はつの 著 

111歳、いつでも今から

73歳の手習いで始めた絵に夢中、80歳代から99歳まで、100号の油絵を描き続ける。100歳を超えてからは、アメリカ旅行、個展、新たに始めた百人一首…。いつも笑顔の111歳!その素晴らしい絵と生き方エピソードを紹介と表紙の袖に書かれていました。

「何かを始めるのに遅すぎることはないわ。やるかやらないかね」と前向きなはつのさんは、とてもおしゃれ。「お会いする方に、元気な姿でお目にかかりたいのです。自分の気持ちも晴れやかになります」と口紅も欠かさずつけておられるとか。(耳が痛いです)

子どもの頃の懐かしい光景が描かれた作品からは、ほのぼのとした温かさが伝わってきます。

自分が逝くときには「笑顔をもって旅立ちたい」と、ほほえみを忘れずに暮らすはつのさん。読み進むにつれ、元気になれるお薦めの一冊です。

2015年2月 河出書房新社 1,404円

『 名歌名句辞典 新装版 』 佐佐木 幸綱・復本 一郎 編 

名歌名句辞典 新装版

記紀・万葉から現代の短歌・俳句・川柳までの名歌・名句6,186を集大成。日本の詩歌史の流れを一冊で展望できる。歌謡・狂歌・俳諧歌なども収録。引きやすく、調べやすい作者別・年代順の配列。収載した全作品に歌人・俳人など専門家による充実し斬新な「解説」を付した。鑑賞の手引きに、作歌・作句のヒントに最適…と内容紹介されています。

仕事でたくさんの名歌・名句辞典を手にしましたが、その中でも使いやすく収録数も多い、お薦めの名歌・名句辞典です。

時々パラパラとページをめくり、目にした歌や句を楽しんでいます。

2015年7月 新装版初版 三省堂書店 4,968円

『 道具が語る生活史 』 小泉 和子 著 

道具が語る生活史

ちゃぶ台、提灯、幻灯、むしろ、緋毛氈、加賀暖簾―。時代と風土がはぐくんだ、モノを通してみる異色の文化史…と内容紹介されています。

日本の生活史研究家である小泉和子先生の著書。今はもう使われなくなってしまった道具もありますが、その一つ一つからそれが使われていたころの暮らしや人々の考え方が伝わ ってきます。教科書で習う歴史とは別の身近な、歴史を知ることができます。

人の手によって支えられていた生活の厳しさと力強さも感じられ、今の暮らしを見直す機会にもなりました。お薦めの一冊です。

残念ながら絶版になっていますので、図書館か古書店でお探しください。

1989年4月 初版 朝日新聞社 1,240円

『 やさしくて、あったかい さっちゃんの木版画 』 高橋 幸子 著 
やさしくて、あったかい さっちゃんの木版画

「さっちゃん」は60年もの間、独自の表現を手探りしながら、花鳥風月の木版画に細やかな美と、豊かな感情を込めてきました。そして、多くの人の心に希望と愛を投げかけてきました。花は楚々として愛おしく、擬人化された動物たちの表情にはユーモラスなところ、ペーソス等を感じます。愛情深く刻まれた木版画に同時代を生きた人々への共感が深められており、心にしみいります。地上に降りた天使の木版画でしょうか…と紹介されています。

著者のご近所に住む従兄のお嫁さんからこの本をプレゼントされました。郵便の包みを開けた途端に、素敵な表紙が目に。手に取り、ページを開くと「やさしくて、あったかい」感じがどんどん伝わり、夕食の支度をするのを忘れるほど夢中になってしまいました。
本の紹介文の通りの楚々として愛おしい花々とユーモラスな動物たちの姿、短いけれども、しみじみとした幸子さんの文章に癒されます。ずっとそばに置いておきたい宝物の一冊。

なお、24ページには従兄の家の猫ちゃんたちも登場しています。(^^)
プレントやお見舞いにもお薦めです。

2016年10月 初版 日貿出版社 2,500円+税

『 ひらがなでよめばわかる日本語 』 中西 進 著 
ひらがなでよめばわかる日本語

〈目・鼻・歯〉も〈芽・花・葉〉も、〈め・はな・は〉。文字を〈書く〉のも頭を〈掻く〉のも〈かく〉。太陽も焚き火も〈ひ〉……日本語はひらがなで考えると俄然面白くなる。漢字の影響を外すと日本語本来の形が見えてくる。言葉がわかれば人間がわかる。日本人の心はこんなに豊かだったのかと驚く。稀代の万葉学者が語る日本人の原点。『ひらがなでよめばわかる日本語のふしぎ』改題…と内容紹介されている文庫本です。

「日本は歴史始まって以来、たくさんの外国語を受容してきたので、それらをごちゃまぜにして考えてみても、日本人の基本の考えは、出てこないからです」と述べる中西先生は「仲間ことば」などの用語を使いながら、本来の日本語の姿とそれを使ってきた人々の心について、わかりやすく解き明かしておられます。

幼いころから日々使ってきた言葉のもとの意味を知り、驚き、そして感動しました。
分厚くはありませんが、読みでがある、充実した内容のお薦めの一冊です。

2008年5月 初版 新潮社 464円