辻川牧子のホームページ

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今月の一冊

今月の一冊子どもの頃から本が好きで、暇さえあれば読んできました。
毎月一冊、これまでの読書の中で印象に残った本をご紹介させていただきます。


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2013年の本一覧
『 図説 江戸っ子のたしなみ 』 藤原 千恵子 著
図説 江戸っ子のたしなみ

出世を求めず、何事も腹八分、気張らず、一日を大切に楽しく生きる、人生の達人であった江戸の庶民。そんな江戸っ子の生き方を、浮世絵をはじめとする江戸絵画の世界に探る…と内容紹介されている図説。

眺めていると気持ちが楽になり「まあいいか」という気分になる、国芳の「なんでもかんでもずっとよしよし」を筆頭に、各ページから江戸っ子の幸福力が楽しく伝わります。さらっとしていながら、深みがある、お薦めの一冊です。

河出書房新社 2007年9月 1,890円

『 新編 日本の面影 』 ラフカディオ・ハーン 著 池田 雅之 訳
新編 日本の面影

美しい日本の愛すべき人々と風物を印象的に描いたハーンの代表作『知られぬ日本の面影』を新編集。赴任先の松江を活写し、日本人の精神にふれた傑作「神々の国の首都」、西洋人として初の正式昇殿を許された出雲大社の訪問記「杵築―日本最古の神社」、微笑の謎から日本人の本質にアプローチする「日本人の微笑」など、ハーンのアニミスティックな文学世界、世界観、日本への想いを色濃く伝える11編を詩情豊かな新訳で収録する。日本の原点にふれる、ハーン文学の決定版…と裏表紙に内容が紹介されています。

当時の美しい風景や人々の優しい気遣いに満ちた穏やかな暮らしが伝わって来ます。読み進むうちに自分がその場に居合わせているような気分に。小さな文庫本の中に、ゆったりとした時間の流れが存在している不思議な魅力を持った一冊です。

角川ソフィア文庫 2000年9月 820円

『 ひとつ拾えば、ひとつだけきれいになる 』 鍵山 秀三郎 著
ひとつ拾えば、ひとつだけきれいになる

「『ひとつ拾えば、ひとつだけきれいになる』私の信念を込めた言葉です。ゴミを拾っていて感じることは、ゴミを捨てる人は捨てる一方。まず、拾うことはしないということです。反対に、拾う人は無神経に捨てることもしません。この差は年月がたてばたつほど大きな差となって表れてきます。人生はすべてこうしたことの積み重ねですから、ゴミひとつといえども小さなことではありません。第一、足元のゴミひとつ拾えぬほどの人間に何ができましょうか」。「ともすると人間は、平凡なことはバカにしたり、軽くあしらいがちです。難しくて特別なことをしなければ、成果が上がらないように思い込んでいる人が多くいます。そんなことは決してありません。世の中のことは、平凡の積み重ねが非凡を招くようになっています」。
トイレや街頭などの徹底した掃除を40年以上続け、多くの人々の心を揺さぶってきた著者の言葉を満載。人生を磨くヒントにあふれた一冊である。…と内容紹介に書かれています。

7年前の早春、出版記念会のお手伝いをしていた折、鍵山先生にお目にかかりました。
控室に入って来られた瞬間、なぜか春風がそっと吹いた感じがしたことを記憶しています。
お茶の御給仕をさせていただいただけでしたが、とても丁寧にお礼を述べてくださいました。
「お人柄の良い方だなぁ」としみじみ思いました。

一文字一文字から、真摯で温かいお気持ちが伝わってきます。掃除だけでなく、経営や仕事に対する姿勢、人生全般について学ぶことができます。読んでいるだけで、心が洗われてくるような気持ちになる一冊です。

PHP研究所 2006年6月 1,050円

『 アメリカ・インディアンの書物より賢い言葉 』 エリコ・ロウ 著
アメリカ・インディアンの書物より賢い言葉

人と人の輪や自然との調和を大切にして、慎み深く暮らしてきたアメリカ・インディアン。彼らは、あるときは物語に託し、あるときは素朴な生き方そのものを通して、その叡智を継承してきました。本書は、アメリカ在住の日本人女性が部族の長老や賢者たちに教えを請い、交流のなかで直接伝授された、そうした智恵の数々をまとめたものです… と裏表紙にありました。

西部劇などでは誤解されることが多いネイティブ・アメリカンの人々。
彼らが文字文化を発達させなかったのは、薬も毒にもなる情報が文字になって独り歩きを始める危険を恐れたからだと言われています。1000年もの間、代々語り継いだ知恵の結晶が飾らない言葉で伝えられています。

アメリカ建国当時、フランクリンやジェファーソンは、土地交渉の相手だったネイティブ・アメリカンの部族の集合体であるイロコイ連邦の洗練された民主的政治体制に驚いたとか。イロコイ連邦の自治を重んじ、自由、平等、権利、平和を尊ぶ精神を、フランクリンたちはアメリカ合衆国連邦制度と憲法の手本にしたと書かれていました。

やさしい言葉で綴られたページを読み進むに連れ、深い叡智と温かさが静かに伝わってきます。 焦りや疲れを感じた時にお薦めの、心が穏やかになる一冊です。

扶桑社 2001年11月 600円

『 ニッポンの縁起食 なぜ「赤飯」を炊くのか 』 柳原 一成・紀子 著
ニッポンの縁起食 なぜ「赤飯」を炊くのか

人の一生を彩る「通過儀礼」と「年中行事」。そこで口にする、特別にしておなじみの食の縁起を徹底考察。祝膳の赤飯、端午の節供の粽、七夕素麺、正月のおせちなど、さまざまな食に込められた先人の祈りを通して知る、「生きるためのささやかな哲学」。…と紹介されている江戸懐石近茶流宗家夫妻の著書です。

なぜ赤飯を炊くのか、なぜ鯛をたべるのか、なぜ餅を搗くのかなどの答えとともに、私たちの祖先がどう生きてきたかが伝わって来ます。静かな語り口の中に、著者の「食」と「人間」に向けられた深い愛情を感じました。

単なる知識以上の“生きる知恵”が学べるお薦めの一冊です。

日本放送出版協会 2007年6月 777円

『 ひとはなにを着てきたか 』 黒川 美富子 著
ひとはなにを着てきたか

「着る」「縫う」という人類の営みを追跡しながら、人々の現代への長い道のりを探る。はじめて衣をまとった人々、日本人の着てきたもの、アジアの民族衣装、ファッションの歴史、現代のおしゃれなど、広く取り上げる。…と紹介されていました。

気の遠くなるような手間をかけ、工夫を凝らして衣服をつくっていた昔の人々。家族のため、生活費を得るため、多く女性たちが寝る間も惜しんで糸を紡ぎ機を織り、仕立てをしていたようです。「命を包む」衣服をたいせつな人のために作り続けた暮らし。物質的には厳しかったかもしれませんが、人も物もいとおしむ心の豊かさは存在していたように感じられました。

しっかりとした取材を基に、誠実な姿勢で綴られた心に響く一冊です。

文理閣 2003年1月 1,995円

『 子育てに「もう遅い」はありません 』 内田 伸子 著
子育てに「もう遅い」はありません

「もっと早いうちにいろいろさせておくんだった」
「よその子はあんなに進んでいる。うちの子は出遅れた!」

…そんなふうに自分の子育てを悔やんだり、周りと比べて焦る必要はありません。周囲の愛情に支えられ、本人がそう望んだとき、子どもは驚くほど成長するものなのです。子育ては奇跡を体験できるまたとないチャンス。成長を信じて「待つ」ことから始めましょう!…と裏表紙にありました。

発達心理学がご専門の内田伸子先生が「心と脳の科学」を研究された立場から、親が本当にすべきことを具体的にわかりやすく説明されています。育児の原点が示され、子育ての迷いを解きほぐすヒントが随所に。赤ちゃんや子どもさんを育てているお父さん、お母さん、これから親になる方々に特にお薦めしたい一冊です。

成美堂出版 2008年3月 550円

『 民族誌・女の一生 母性の力 』 野本 寛一 著
民族誌・女の一生 母性の力

かつて、この国は貧しかった。男にも厳しい時代だった。だが、母性を保護し女を守る工夫に満ちていた。従来の女性蔑視史観をくつがえす、「手の届く過去」からの英知の数々を紹介…と前袖に紹介されています。民俗学者の野本先生が日本列島を歩いて採集した民の知恵が満載されている本。

「本書に登場する女性たちは、厳しい時代を生きぬく中で、様々な労苦に耐えながらも、自らに誇りを持ち、家族や隣人を愛し続けてきた。とりわけその母性は豊かだった。この国には女性を軽視する風潮が充満していたように解説されることが多いのだが、手のとどく過去の民族社会のシステムや民族の思想を細かく見てゆくと、実態は決してそんなに単純なものではなく、地域社会やイエとして女性と母性を尊び守る潮流が絶えることなく流れていたことに気づく」と文中で述べられています。今の社会を見つめ直す時、おおいに参考になりそうな古来の知恵があふれていました。女性にも男性にも、力を与えてくれそうなお薦めの一冊です。

文芸春秋 2006年10月 777円

『 浮世絵に見る 江戸の子どもたち 』 くもん子ども研究所 編
浮世絵に見る 江戸の子どもたち

くもん子ども研究所が十数年にわたって収集してきた「子ども浮世絵」は、1994年から国内展、1998年からヨーロッパ巡回展を行い、大きな反響を呼びました。とくに子どもたちの日常生活を描いた浮世絵は新しく発掘されたもので、江戸期の子ども文化解明の貴重な絵画資料として高い評価を受けています。春信、清長、豊国、国貞、広重、国芳などの有名絵師がこぞって手掛けた「子ども浮世絵」は、浮世絵愛好家だけでなく、家庭でも広く楽しめるものです。本書は、くもん子ども研究所が所蔵する浮世絵約七百点を紹介しながら、近代の中で失われた教育を再考し、子ども文化の源流を探り出します―と内容紹介にありました。

のびのびと元気よく遊ぶ子どもたちの姿が、いきいきと描かれた浮世絵がたくさん載っています。眺めていると、たのしそうな笑い声が聞こえてきそうな感じがします。浮世絵の紹介だけでなく、当時の子どもを取り巻く状況が丁寧に説明され、昔の子育てについても知ることができます。

子どもを愛する大人たちが大勢いた江戸、「子宝」という言葉が生きていた時代の面影に出会える一冊です。

小学館 2000年11月 2,940円

『 徳川家が見た幕末維新 』 徳川 宗英 著
徳川家が見た幕末維新

ペリー来航から十五年で幕府は倒れた。しかし「賊軍」の藩主らは一人も殺されず慶喜は後に公爵に叙せられる。大転換期の決断力とは。徳川家から見ると幕末維新は一層面白い。…と前袖にある田安徳川家十一代当主徳川宗英氏の著書。

小説やドラマでは、あまり良く描かれない幕府側にも、素晴らしい働きをした優秀な人材が大勢いたことを知ることができました。 また、朝廷方も幕府方も上層部は皆、婚姻関係で結ばれた親戚同士であったことを改めて感じました。

激動の時代の歴史の渦の内側にいた人々のことが、親族ならではの言い伝えなどから伝わる、お薦めの一冊です。

文春文庫 2010年2月 914円

『 養生訓に学ぶ 』 立川 昭二 著
養生訓に学ぶ

江戸時代の儒者・貝原益軒による『養生訓』。天からの授かりものである「いのち」への畏敬、老いてこそ真に味わうことができる人生の楽しみ、心身のもとは「気」の流れであるとする身体観、人間に備わっている「自然治癒力」への信頼―益軒が説く「養生」とは単なる健康のハウツウではなく、江戸という成熟社会に暮らす人々の生き方の思想であった。… と前袖に紹介されていました。

病や老いをテーマにした著作が多い、立川昭二先生の温かなまなざしを通して、貝原益軒のメッセージが、わかりやすく伝わります。心の持ち方や生き方そのものを見直すきっかけにもなる珠玉の一冊です。

PHP新書 2011年1月 693円

『 旬の禅ごはん 鎌倉、不識庵の台所から 』 藤井 まり 著
旬の禅ごはん 鎌倉、不識庵の台所から

「禅ごはん」とは、
精進料理のこころを受け継ぐお料理のこと。
お腹はいっぱいになったけれど、疲れがとれない…
まずくはないけれど、満足感がない…
そんな日が続いたら、ぜひ「禅ごはん」を試してみてください。
手軽でおいしいのはもちろん、禅寺の知恵がこころも満たしてくれるレシピを 本書の中に、120品集めました。
一口食べるごとに、心と体はつながっていること、食を大事にすることは、心を大事にすることであることが実感できると思います。―――― とページ裏に書かれた料理の本です。

身近な材料で、誰にでも簡単に作れるレシピが優しい写真と一緒に紹介されています。
禅の考え方も、わかりやすく伝えられて読み物としても素敵な本。
ページを開くと、まり先生の温かなお人柄が伝わってきます。

私事で恐縮ですが、鎌倉の不識庵を初めてお尋ねしたのが16年前。
以来、まり先生や亡くなられたご主人の宗哲先生にお世話になってきました。
『食を大事にすることは、心を大切にすること』とおっしゃっておられた宗哲先生のご遺志が立派に受け継がれた作品だと思います。

からだも、こころも、おいしく満たしてくれる一冊です。

誠文堂新光社 2012年11月 1,575円